2013年8月28日水曜日

中国の借入れ増加、成長の足かせに:中国の「失われた10年」はくるのか?



●左:中国企業と家計の債務の対GDP比、中央:返済額の対GDP比、右:中国GDPの対前年比


ウオールストリートジャーナル     2013年 8月 27日 13:09 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324361104579037881646010104.html

中国企業・家計の借入れ増加、成長の足かせに
 By    TOM ORLIK

 中国の野放図な融資の伸びが経済成長鈍化と金融市場の緊張を引き起こす恐れが高まっている。
 古い産業部門ほど、こうした問題を如実に示している分野はない。
 この部門では国営の鉄鋼会社やセメント企業が、生産能力の過剰にもかかわらず借り入れを継続し、業容を拡大している。
 中国の格付け会社の大公国際によれば、債務が高水準で利益が少ないため、国営鉄鋼大手の首鋼集団など一部企業は新しい融資を使って古い債務の返済に充てている。
 首鋼集団はコメントを避けた。

 4年半にわたる借り入れの猛烈な拡大の結果、中国の債務負担が全国的に大幅に増加した。
 国際決済銀行(BIS)によると、企業と世帯による借入残高は2012年末、国内総生産(GDP)比で170%に達し、08年の117%から急増した。
 12年末の米国の157%を上回る比率だ。

 金利を6.9%(6月の平均)と想定し、向こう10年間に債務を返済するなら、企業と世帯の債務の元利支払い合計は、中国のGDPの約3分の1に相当する。
 これは金融危機以前の07年の米国の比率21%を上回っている。
 BISによれば、米国では12年末もおおむね変化していないという。

 危機が差し迫っていることを示す兆候はほとんどない。
 中国の銀行の不良債権比率は低い。
 貯蓄率が高くて、銀行預金が積み上がり続けている。
 資本勘定が厳格に管理されているため、資金が他のところに流出するのは難しい。
 しかも、中国当局が問題を管理する手段は幾つもある。
 多くのケースでは、貸し手と借り手がいずれも国営企業だ。中央政府の債務は少ない。

 しかし危機に陥らなくても、返済コストの上昇はなお、経済成長を圧迫する恐れがある。
 成長率は既に過去20年間で最低に落ち込もうとしている。
 借入資金が債務返済に充当されれば、企業はそれほど投資できないし、地方政府は重要な公共サービス向けの支出を制限しなければならなくなるかもしれない。
 高債務の企業や政府はデフォルト(債務不履行)に陥る公算が大きくなる。
 経済成長が鈍化し続ければなおさらだ。

 これに、過度に貸し出している金融部門の脆弱性が加わる。
 不良債権が増えれば金融部門は貸し出しを抑えなければならなくなるかもしれない。
 銀行融資残高は2008年末以降、既に倍増している。
 インフレ加速への対応や規制当局による銀行部門の規制緩和に伴い、金利が上昇に転じる可能性があるが、それがさらに圧力になるだろう。
 既存の債務水準からみれば、貸出金利が1%ポイント上昇すれば、返済の年間負担がさらにGDPのほぼ2%分増えるだろう。

 主要なフォールトライン(断層)は、中国の地方政府の返済能力だ。
 08年の金融危機以降、中国全土の都市は道路、鉄道、空港への支出急増に充当するため借り入れを急増させた。
 これらの事業の多くは短期的にほとんど利益を生まないから、返済は至難の業になり、一部の地方政府は既存融資返済のためさらに借り入れを増やそうとしている。

 中国の格付け会社である中国誠信によると、12年末時点で、中国南西部の都市・昆明の金融公社の一つ、昆明トランスポート投資は379億人民元の債務を抱えている。
 同市の税収全体を上回る債務だ。
 誠信は格付けリポートで、昆明トランスポート投資の利益はせいぜい金利返済をカバーできるほどだから、「この債務負担は重い」と指摘している。
 昆明トランスポート投資はコメントを避けた。

 過去最大級の債務を積み上げているのは、首鋼のような鉄鋼大手やアルミ精錬会社、セメントメーカーといった重工業企業だ。
 金融情報会社ファクトセットのデータによれば、重工業企業の純債務は2012年には純利益の30倍相当に達し、11年当時の10倍相当を大幅に上回った。
 債務が増え続け、利益が急減した結果だ。
 アルセロール・ミタルなど海外のライバルの債務・利益比率はこれを大幅に下回っているし、安定している。

 中国はまた、借入金の増加に比べ経済が成長していないようだ。
 今年上半期の信用は前年比で約20%増に達したのに対し、GDPはわずか7.6%増だった。
 その理由として一つ考えられるのは、新しい債務が生産的な投資を生み出すのではなく、既存融資の利子返済に充当されていることだ。

 中国の中央銀行である人民銀行は、ほとんど意に介していないようにみえる。
 同行は、信用が経済に波及し、景気を押し上げるにはしばらく時間がかかると説明している。
 これに対し、民間アナリストはそれほど強気ではない。
 ソシエテ・ジェネラルの中国担当エコノミスト、ウェイ・ヤオ氏は
 「これは債務のわなで、企業は融資返済のためますます借り入れを増やさねばならなくなるだろう」
と述べた。
 同氏の試算によれば、昨年末の中国の債務返済コストはGDPの約38%に相当するという。

 中国の政府と企業は、債務返済のため、売却できる資産を持っている。
 昆明トランスポート投資も首鋼も、債務以上に資産がある。
 しかしアナリストたちは、こうした資産面の安全対策は現実のものというより幻想かもしれないと言う。
 危機の場合には、資産は額面通りに売却しにくくなるからだ。

 重債務はまた、借金での資金調達によるインフラ支出型から消費型に経済を転換する中国の努力にも重しになるだろう。



ウオールストリートジャーナル     2013年 8月 27日 16:59 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324361104579038211528571856.html

中国の経済改革案、骨抜き必至
By RICHARD SILK, YAJUN ZHANG AND TOM ORLIK


●労働者を都市へ流入させるための政策が中国の経済改革案の中心になっている。写真は新疆自治区に帰る労働者

 【北京】
 中国政府が7月半ばに打ち出した銀行部門の規制緩和は、同国の経済モデルの移行計画にとって重要な一歩だった。
 しかし、それは中国の新指導部にとっては容易に踏み出せる最後の一歩だったかもしれない。
 今後の経済改革計画は共産党内で激しい反発に遭いそうだ。

 習近平国家主席と李克強首相は、国家の役割をもっと制限することを提唱しており、政府は投資重視型から内需重視型の経済への移行のため経済を調整する方針を示している。

 中国政府は7月19日、銀行部門に一段と市場の力を注入するため、銀行の貸出金利の下限規制を撤廃した。
 だがそれ以外の改革案は厳しく見直されている。
 このため年末までに行われる予定の共産党中央委員会第3回総会(3中総会)では、改革案は骨抜きにされたり棚上げとなる可能性が大きい。
 3中総会は、構造改革案についての合意を目指すことになっている。

 米ブルッキングス研究所のチェン・リー氏によると、市場志向の改革派として知られる劉鶴党財経指導小組弁公室副主任を中心とする作業グループが、3中総会に向けて具体的な経済改革案の策定を進めている。

 リー氏は「劉氏は15―20年間、財政を扱ってきた能力のある経済テクノクラートだ」と述べ、「信念を曲げない」と評価する。
 問題は、劉氏がそうした能力を発揮して、経済改革に対する強硬な反対論に打ち勝つことができるかどうかだ。

 劉氏のグループは現在、一連の経済改革案を徹底的に議論しており、その結論を秋に提示する見込み。
 経済学者の益平氏によれば、検討されている改革案は、数十年にわたって続いてきた開発型の経済計画に別れを告げるものだ。
 改革案には、土地所有や都市居住に関する規制撤廃や、財政難の地方政府が収入増となるような税制改正、エネルギー価格の規制緩和などが盛り込まれる見通し。
 銀行預金の金利自由化や、資金の国内外の移転規制の緩和などの金融改革も、検討課題の上位の方に置かれているという。

 しかし、経済改革案の多くは、さまざまな政府機関の利益に反する。
 国有銀行は、預金金利を競争的なものにせざるをえなくなる。
 地方政府は、増加する都市住民のための社会福祉支出を増額する必要が出てくるが、増税がその財源を賄えるかどうか明らかでない。

 北京大学の姚洋教授(経済学)は、
 「人々は財政改革に多くの期待を持っているが、実質的な進展があるとは思えない。
 中央と地方の政府の利害を均衡させるのは難しい」
と話す。

 劉氏のグループに近い研究者によれば、李首相が推進している成長加速と民間消費拡大のための都市への移住促進が経済改革案の中心に置かれている。
 だが、各省庁がすでにこの都市化計画を骨抜きにしたという。
 同研究者は、中国ではほとんどの計画案はコンセンサス方式をとるため、「異論の多い部分は削除されてしまう」と語った。



レコードチャイナ 配信日時:2013年9月6日 8時20分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=76395&type=0

日本の「失われた10年」、教訓学び取る中国―中国メディア


●4日、現在の中国経済は1980年代の日本と3つの共通点があるとされ、中国は日本の「失われた10年」から教訓を学び取る必要があると報じられている。

 2013年9月4日、現在の中国経済は1980年代の日本と3つの共通点があるとされ、中国は日本の「失われた10年」から教訓を学び取る必要があると報じられている。
 ロイター通信掲載のコラムを中国・財経網が報じた。

 現在、中国には
①.債務水準の上昇、
②.輸出競争力の低下、
③.高齢化
という3つの特徴が現れている。
 債務水準は1980年代の日本と同程度で、平価切り上げと輸出競争力の低下という点でも中国は25年前の日本と極めて酷似した状況にあるという。

 高齢化社会も経済成長を阻害する要因となっている。
 1989年の日本は生産年齢人口に占める高齢者の割合が17%だったが、20年後の2009年にはこの割合が倍増している。
 現在の中国は同12%弱にとどまっているものの、一人っ子政策が高齢化を急加速させるだろう。

 日本経済を圧迫したのは不動産ブームだった。
 金融機関の経営の失敗、不良債権処理を先送りしたことが問題を大きくしたが、ここでも中国は似たような状況にある。
 中国国家会計検査署の予測では、国内の各地方政府による
 借入規模は総額2兆4000億元~2兆9000億元(約39兆1000億~約47兆2500億円)
に上るとされ、価格を上げ続ける土地を抵当にしている。
 政府は投機目的の不動産取引に対する引き締めを強める一方で、バブル崩壊や経済への影響に注意を払う必要に迫られている。

 ただし、中国には日本と異なる有利な点もある。
 1980年代にはほぼ都市化を完了させていた日本に比べ、中国は現在も発展の過程にあることのほか、労働生産性が徐々に上昇していること、
 国内金利と国際資本の流動性を制御している点などだ。
 一方、国民の平均収入に見る実質購買力は、現在の中国でも1990年当時の日本の3分の1でしかないなど不利な点も多い。

 日本は「失われた10年」を経ても繁栄を保ち続けていられたが、
 中国が仮に「失われた10年」を経験することになれば国民に多大な苦痛を強いることになるばかりか、
 世界各国にも大きな悪影響を与えることになると、記事は指摘している。




減速する成長、そして増強される軍備


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