2013年8月9日金曜日

中国GDP成長率はおそらく実質では3%ほど:解放軍が実権をにぎるかも?

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●宮崎 正弘(みやざき・まさひろ)氏
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。近著に『オレ様国家 中国の常識』『2012年、中国の真実』『中国が世界経済を破綻させる』など。メールマガジン『宮崎正弘の国際ニュース・早読み』を発行。(撮影:前田せいめい、以下同)
奥がマット安川。


JB Press 2013.08.09(金)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38425

【「マット安川のずばり勝負」2013年8月2日放送】

外国人留学生への国費支出を国際世論醸成に回せ
始まった中国のバブル崩壊、そして解放軍が実権を握る可能性

マット安川:
 毎月東アジア各地を巡って取材されている、評論家・宮崎正弘さんがゲスト。
 日本のニュースでは知り得ない海外現地リポート、初めて聞く話がほとんどでした。

■中国経済のバブル崩壊はすでに始まっている

宮崎:
 中国の経済成長率は7%だっていいますけど、国家統計局が作ってる数字はでっち上げです。
 だいたい李克強(中国首相)が信用してないというぐらいですからね。
 彼がアメリカ大使と会ったときのそういう発言をウィキリークスが曝露して、今や世界の常識ですよ。

 GDP成長率は完全なインチキとして、多少は本当の数字もあります。
 コンテナ取扱数、電力消費量、通貨供給量なんかはごまかせません。
 あと失業率です。
 今流動人口が2億6000万人いるんですね。
 農地をなくした農民が5000万人いたり、大学の新卒者700万人のうち450万人は職に就けなかったりというのが実情です。

 こういう数字で推し量ればだいたいの成長率が分かります。
 たぶん実際には3%を切ってると思いますよ。
 いずれにしても7%なんてウソに決まってます。

 日本のマスコミはいよいよ中国経済が危ないと言い始めましたが、私に言わせれば中国のバブル崩壊はもう始まっています。

 今まではカンフル注射を打ってきたわけですよ。
 つぶれかけのデベロッパーから大企業まで。
 今は高利回りの理財商品を預金者に売って、それで金を集めて不動産投資をやっている。
 これはもはや生命維持装置で生きながらえている状態です。

 しかし中国というのは面白い国で、あらゆる経済理論が適用できないんです。
 西側のわれわれが考えているような、
 論理的帰結とは無縁なのが中国的特性でね。

 また奥の手をやりますよ。
 札ビラを今よりもっと刷ってね。
 そしたら人民元の価値が下がりますけど、かまわないからやっちまおうと。

 最近、東南アジア諸国を回っているんですが、華僑が朝から行列を作って金を買っていたのには驚きました。
 ラオスでもタイでも、分厚い札束を持ってね。
 そのうち何か起きてもおかしくないと思ってるんでしょう。

■軍のご機嫌とりに汲々の政治局、中国の実権はいずれ軍が握る?

 この半年で分かってきましたが、習近平(中国国家主席)の指導力には限界がありますね。
 もともとが前の民主党政権におけるアノ方みたいな、つまりはお坊ちゃんでしょ。
 独自のカラーというものが何もないんですよ。

 一番の問題は軍を押さえきれていないことです。

 中国の軍隊は共産党に従属する、常に党の言うことを聞かないといけない軍でした
 。鄧小平までの世代は革命戦争を戦って血を流したこともあって、軍に対する指導力があったんですね。

 しかし最近の政治家は、江沢民も胡錦濤も習近平もみんな軍歴がない。
 軍人から見れば、なんだこの野郎って感じなんですよ。

 政治局としては軍のご機嫌をとらないといけない。
 それで軍事予算を増やしてるんです。
 要求されるままにミサイルを増やし、兵舎を建て替え、給料を上げている。
 にもかかわらず彼らは習近平の言うことを半分も聞かない。
 これが今手に負えない問題になっています。

 中国はエジプトやパキスタンのような、軍の同意なしではどうにもならないような国に、やがて近づいていくんじゃないでしょうか。
 例えば、民主化を要求する勢力が騒ぎを起こす。
 それを抑えるために出てきた軍隊がそのまま権力を取る、という可能性が実は一番高いんじゃないか?

 すぐに起きるようなことではないにしても、それくらい中国の政治の中核的要素が変わってきているということは指摘したいと思います。

■米議会の尖閣問題決議は日本外交の大勝利

 習近平は先の米中首脳会談でもメンツを失いました。
 8時間の会談でもっぱら発言したのはブレーンで、彼がしゃべったのは1時間ぐらいのようです。

 そこで一番力説したのは、尖閣諸島は歴史的に中国のもので、日本はそれを盗んだということでしたが、オバマ大統領はほとんど取り合わなかった。
 それでもクドクド言う彼に大統領が、日本はアメリカの同盟国だと言って、そこで議論が終わったそうですが。

 それにも増して重要なのは、先月末、尖閣問題をめぐってアメリカ上院が決議したことです。

 尖閣諸島には日本の施政権が及んでおり、それを脅かすことに反対すると。
 過去、中国は国連における多数派工作やらアメリカの議員の買収工作やらを盛んにやってきましたが、それが全部無になったってことです。

 それほど努力したわけでもないのに、これは日本外交の大勝利ですね。
 先週の政治局会議で、習近平は当面、領土問題は棚上げする、平和路線は変わらないと言いましたが、
 日本はそもそも領土問題は存在しないという立場です。

 安倍(晋三)首相は、棚上げという条件をつけて首脳会談を望むならそれには乗らないと言っている。
 このところの日本外交はこういう優位な立場を保てています。

■意外に指導力アリの金正恩、困り果てながら支援する中国

 習近平とは対照的に、北朝鮮の金正恩は思いのほかしっかりしているようです。
 ただのボンボンならまとめきれないはずの軍を、一応握ってますからね。
 気に入らない軍人はみんな失脚させちゃったでしょ。

 ついこないだ国家副主席の李源潮が行きましたけど、中国の首脳はけっこう北朝鮮を見に行っています。
 そのたびにカネよこせ、原油よこせってたかられて、困り果てている。
 でも中国としては、あの独裁体制がつぶれでもしたらもっと困るんです。

 仮にそうなったら、だいたい1900万人の人口のうち、200万~300万人が鴨緑江を渡って中国に入ってきます。
 今のシリアを見ても分かるように、陸続きってのはコワイんです。
 日本にも難民が来るって騒いでる人がいますけど、来たってせいぜい1万人でしょう。

 中国がもうひとつ恐れているのは、あそこに共産党に反対する政党ができるような事態です。
 だからしぶしぶ援助を続けて、体制が倒れないように人民解放軍を30万人張り付けている。
 それが中朝関係の実情ですよ。

■中国人留学生に使う金を米議会工作に回すべし

 アメリカのカリフォルニアあたりで反日運動が起きていますが、あれを最初に起こしたのは中国系アメリカ人たちです。
 20年、30年前から南京大虐殺のプロパガンダビラを通行人に渡したりしていました。

 なんでそんなことをするのかというと、結局、アメリカにおけるチャイニーズ・アメリカンのポジションを維持するためです。
 自分たちのアイデンティティが何もないから、人の悪口を言うことで自分たちがいかに正統であるかをアメリカ社会にアピールしている。

 今のコリアン・アメリカンも同じことです。
 逆に言えば、それほど彼らがアメリカ社会からバカにされているということ。
 社会的地位がもっと上がればそんなことをしなくていいんですが、それは期待できないからずっとやり続けるでしょうね。

 日本が今やるべきは議会工作と、ジャーナリストに日本シンパを増やすことです。
 アメリカに限らず、世界中でやらないといけない。

 もっと言えば、日本はカネを出して世界中から留学生を集めていますけど、これを止めちゃえばいいんだよね。
 中国人留学生に対して入学金も学費もタダ、生活費支給ってやってるわけです。
 年間200億円ぐらい使ってるんですよ。

 この半分でいいからアメリカの新聞に広告を出すとか、ジャーナリストを日本に招待するとか、もっと効果的なことに使わないと。

 この問題はつまるところ文部行政が悪いんですよ。
 日本には780ぐらい大学があって、半分以上は定員割れしてる。
 それを補うために補助金をつけて留学生を呼ぶ。
 なんでそんなに大学が要るかといえば、官僚たちの天下り先だからです。
 コレはぶっつぶさないといけませんよ。

 田中真紀子(前文部科学大臣)は何も知らないし、知ってることも間違いだらけだけど、新設大学の申請を認めなかったことだけは正しかったね。

マット安川(本名:安川昌之):
(株)オフィスヤスカワ代表取締役。1973年1月10日生、神奈川県出身。O型。大学在学中から30種以上の仕事に携わり、のちに渡米。語学を学び、インターンシップ、のち現地法律事務所へ勤務、3年間マネジメントを担当する。帰国後、各界著名人のトレーナー兼マネジメントなどを手がけ、企業コンサルティング、事業マッチングのほか、TV・ラジオの番組DJ・企画制作など多方面に活躍中。

宮崎 正弘(みやざき・まさひろ)氏:
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。近著に『オレ様国家 中国の常識』『2012年、中国の真実』『中国が世界経済を破綻させる』など。メールマガジン『宮崎正弘の国際ニュース・早読み』を発行。(撮影:前田せいめい、以下同)




減速する成長、そして増強される軍備


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