2013年8月20日火曜日

毛沢東化する習近平:独裁的な政治モデルに倍賭けしている

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ウオールストリートジャーナル     2013年 8月 19日 13:11 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324562504579021804040463412.html
By    JEREMY PAGE

毛沢東主義に傾斜する習中国国家主席─改革派は落胆

 【武漢(中国)】
 習近平中国国家主席は7月、毛沢東が1950年代にプール付きでエアコン完備のぜい沢な夏を過ごした、武漢にある湖畔の別荘を訪れた。
 習氏はここにある展示センターの開所式に出席し、この別荘を若者に愛国主義と革命を教育するための拠点にすると宣言した。
 展示センターは毛沢東の指導体制下で何百万もの人々の命が失われたことには触れていない。

 習氏はその一週間前には、毛沢東が1949年にそこから北京攻撃を仕掛けたという村を訪れた。
 習氏はそこで「私たちの赤い国は決して色を変えることはない」と誓った。

 習氏がこのところ毛沢東主義の色彩を強めているのは、単なるレトリックではない。
 毛沢東が反対派粛正のための「整風」運動を起こすきっかけとなった整風文献からの引用が目立っている。

 折から、中国当局は重慶市のトップだった薄熙来被告の収賄などをめぐる公判への準備に追われている。
 薄被告は毛沢東主義復権運動を率いる共産党の希望の星だったが、昨年収賄や職権乱用の罪に問われて失脚した。
 薄被告の弁護士によれば、初公判は22日に開かれる見込み。

 習氏の毛沢東主義への傾斜ぶりに、多くの政治改革の提唱者は落胆している。
 これら改革派は、薄被告の失脚が独裁的な指導スタイルの放棄を示唆し、法の支配の厳格化や中国共産党の力の抑制につながるのではないか、と期待した。

 しかし、最近の習氏の発言は、中国の問題を解決する手段として、中央集権的な指導スタイルを求める多くの薄被告の支持者を喜ばせ、勢いづかせている。

 薄被告を支持してきた新左翼(毛沢東主義)運動の中心メンバーで経済学者の胡鞍鋼氏は
 「毛沢東はわれわれの豊かな資産である」
と主張する。
 新左翼の別の経済学者である張宏良氏は7月にブログで、「習氏の言動には驚かない」と述べ、習氏の最近の演説をみると新左翼の政策課題を十分に吸い上げているようだとし、新左翼は習氏を支持すべきだと唱(とな)えた。

 中国共産党内の多くの関係者は、習氏が毛沢東主義のレトリックや戦略を利用していることから、
 国家主席在任中の今後10年間は意味のある政治改革を追求するつもりはないようだと受け止めている。

 実際のところ、習氏は薄被告の毛沢東主義復権運動を借用する一方で、
 習氏自身の評価を引き上げるとともに、共産党への大衆の支持を回復させるための抜け目のないメディア戦略を駆使し、
 独裁的な政治モデルに倍賭けしているようにみえる。

 習氏は7月に、党の強化と純化のための運動を開始し、多くの内部関係者は毛沢東の整風運動を想起した。

 一方で国営メディアは、現行憲法により共産党の権力は規制されるとする立憲主義に対する一連の批判を展開している。

人権団体によれば、警察当局はここ数週間、政府高官の資産公開を求めている法学者の許志永氏など活動家数十人の身柄を拘束した。

 中国の新指導部は、過去30年にわたって経済に活力を与えてきた投資と輸出に代わる成長エンジンとして、国内消費を刺激するための経済改革案を年内に発表する予定だとの明確なシグナルを送っている。

 しかし、政治面では、習氏は限定的な自由化でさえ検討する兆候を見せていない。
 習氏の幼友達の一人は、彼が10代の時に共産主義や毛沢東主義の書物を読みふけっていたことを思い出し、
 「習氏は本性を現し始めたようだ。それは始まったばかりだ」
と述べた。

 党内の関係者は、薄熙来被告の裁判について罪状が予想に比べはるかに軽度なものになっていることを指摘し、薄氏が有罪を認めることで習氏と、太子党といった薄氏の支持者の間で取引が成立したとみている。

 習氏は、7月に江沢民元国家主席から異例の公式の支持を得た。中国外務省がウェブサイトで発表した声明によると、江氏はキッシンジャー元国務長官と上海で会談した際に、
 「中国のような大国には強く有能な指導者が必要である
と指摘、
 「習氏は物事を解決できる賢明な指導者である
と称賛した。


 習近平と毛沢東派との間に共存取引が成立したようだ、とみるのが至当だという。
 ということは、際立った改革はなされずにトカゲの尻尾切り程度のもので終わる可能性が大きい。
 その反対に粛清の嵐は極めて大胆に行われる可能性がある。
 習近平が毛沢東に似ているということは当初から言われていたことで目新しいものではない。
 ただ、周囲の期待が願望と織り交ざって直視せずに持ち上げてきたきらいがある。
 時の経過とともにその虚像のベールが剥がれて、実際の姿が現れ始めてきたということのようである。
 中国は胡錦濤のもとで目一杯引っ張り上げられ、
 習近平のもとでそのヒズミを解消できずに沈んでゆく、
といったところがノーマルな判断ではないだろうか。
 習近平は改革ができないとなるとなると反動で強権独裁化への道を歩む可能性がある。
 10年という長期の政権はなんでもありの歴史を作る可能性が大きい。
 逃げ出すのはやはり今のうちだろう。
 時期を逃すと出られなくなる。




減速する成長、そして増強される軍備


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