2013年8月2日金曜日

日中関係は長期的な「疎遠」によって拓かれる:環球時報社説

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レコードチャイナ 配信日時:2013年8月2日 19時40分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=75001&type=0

日中関係は長期的な「疎遠」によって拓かれる―中国紙社説

 2013年7月31日、日本メディアによると、外務省の斎木昭隆事務次官が29日から2日間の日程で中国を訪問した。
 日本側は日中外相会談、さらには首脳会談を実現に導くことを望んでいる。
 日本の多面的な外交姿勢にどう対処すべきか。
 (環球時報社説)

 日中関係が緊張し続ける中、外交的接触の継続は大変重要だが、
 日中首脳会談に関しては一定期間不必要だ。
 これは日本へのぶれないシグナルであるべきだ
 首脳会談はすでに外交的意義を超えており、首脳会談の開催自体が日中関係全体に対する1つの姿勢であり、一定の成果があるべきである。
 だが安倍政権の対中思考に全く変化はない。
 安倍氏が中国首脳と会いたがるのは完全に自分個人および日本の政治的利益に資するパフォーマンスであり、その強硬な対中政策に口実と合法性を与えるためである。
 中国側が彼のこのゲームにつきあう必要は全くない。

 安倍政権は東シナ海の対岸から中国に対してうまく立ち回ろうとしているが、これは中国を彼らのペースで動かすことが目的だ。
 それでは中国は疲れ果てるうえ、愚かに見えてしまう。
 中国にとって正しい選択は傍観することだ。
 安倍政権を勝手に立ち回らせればいい。
 われわれは座って茶でも飲み、菓子をつまみながら、彼らの汗だくの大立ち回りを鑑賞すればいい。

 日中間の外交闘争は実際、次第にこうした方向へ向かっている。
 安倍氏は就任以来、中国に対して硬軟取り混ぜ、数え切れないほど様々な呼びかけを行なってきた。
 中国側の対応は全て外交部(外務省)報道官が労をとり、首脳は一言も返事をしていない。
 表面的に見ると日本側が絶えず主導的に攻勢をかけているようだが、実際には
 中国側は静観によって日本に対する心理的優勢を強めているのである。
 これは日本との外交闘争にとって有利であるだけでなく、中国社会の対日心理の調整にとっても重要だ。

 中国は1世紀余りの間、日本に対して実力面でも心理面でも劣勢にあった。
 過去10数年間、中国は心理面で旧時代の暗い影から抜け出すよりも早く、
 実力面で日本に追いつき、追い越した
 だが最近の日本との対峙において、中国政府と中国社会はかつてない悠然さを示し、戦術上真剣に日本に対処すると同時に、戦略上日本を軽視する心境に真に達し始め、
 日中関係の長期的冷え込みを余り意に介さない自信を得始めた

 中国にとってこれは対日関係を再建する上での心理的礎だ。
 これは日本が今後同様の挑発を行なっても、中国社会に対する感情的刺激は弱まり、中国が日本の挑発の現実的意義、中国の主要戦略目標に対する日本の妨害が一体何なのかをより理性的に判断し、最も適切な手段と強度で反撃することが可能になることを意味する。

 日本は伝統的意味における実力の対立を中国と行なう勇気はない。
 日本の実力はそれにはどんどん不十分になっているうえ、そのような政治コストには耐えきれない。
 日本は中国との心理的対立を望んでいる。
 日本は発言の弾力性と政治芝居を演じる資源に富んでいるうえ、米国という強大な同盟国も後ろに控えており、自分では優勢にあると思っている。
 だが中国は事実上すでに日本の陣構えを突破した。
 われわれはしばらく日本を相手にしないことで、その活発な姿の正体が、強大化する中国に対して極めて自信がないためのばたつきであることを暴いた。

 したがってわれわれは来中した日本の事務次官に礼節をもって応対し、
 外交部の削減された接待費で良い食事を出し、
 中国側の立場と原則を日本人はすでによくわかっているはずだと重ねて表明したうえで、
 到底揺るがぬ中国の対日政策を本国に伝えるよう依頼すべきだ。

 安倍政権が重要ないくつかの対中政策を変えないなか、日中関係に大幅な改善の余地はないが、
 中国社会は現在の両国の「冷たい対立」を結構よしとしている。
 戦争さえ始めなければ、日中間の様々な交流はできるだけ自然な流れに従えばいい。
 双方に有利なことなら自ずと行なおうとする人がいるし、リスクの高いことなら自ずと萎縮する。
 中国の発展はゆっくりとこうした調整に適応していく。
 われわれは日本も徐々にこれに適応することを望む。

 安定的に冷え込んだ日中関係は何年か続いてもよい。
 両国はこの時間を利用して再考し、将来の両国関係を構築するための新たな出発点を見つけることができる。

(提供/人民網日本語版・翻訳/NA・編集/武藤)


 「日中首脳会談に関しては一定期間不必要だ
 おそらくこれが両者のノーマルな立場であろう。
 では不必要な一定期間とはどれほどか、ということになるが、最低でも3年は必要であろう。
 ということはあと2年は日中は睨み合っているのがいい。
 性急にして安易は解決は求めるべきではない。
 その程度のことはこの社説にみられる通り両者とも十分に分かっている。
 ただ、立場上
 日本の会話の窓口は常に開かれている
というポーズをとっているということであろう。
 それに対して一方の
 「中国社会は現在の両国の「冷たい対立」を結構よしとしている
 という表現となっている。

 この結果、中国の狭い心が問題をややこしくしているというアピールを外部に発信するということになる。
 まあ、実際には日中ともに「冷たい対立」をよしとしている、ということである。
 「安定的に冷え込んだ日中関係は何年か続いてもよい」 
 おそらくこれは日本にとってもそうだろう。
 いますぐの結論など必要ない。
 ただ、パフォーマンスとして
 「日本は常に誠心誠意努力していますよ、しかし中国は応えてくれません
という嫌味を演出しているということである。
 こう考えると日本にとっては軍事系の環球時報が、結構素直に自己表現しているような気がする。
 日本のやり方というのは言葉は少ないが、濃密でウラで二段三段ときに四段構えぐらいで動いている時があって、読み切れない。
 日本のマスコミは表面の段しか見ないで論じるが、日本の外交は奥が深い。
 そうでなければ、つい最近までの1/3世紀以上にわたって、西欧中心世界の中でナンバー2を保持できるはずがない。

 この環球時報の社説を読むと分かってくることがある。
 「日中関係の長期的冷え込みを余り意に介さない自信を得始めた
とあり、「戦争さえ始めなければ」という言葉も添えられている。
 ということは、中国としてはまず「尖閣奪還」の意思はない、ということになる。
 ここ数ヶ月ほど宣伝されてきたような
 「静かにして、長期の戦い」
を基本に置いているということである。
 問題は、さて、それでいいのかということになる。
 「あれほどに国内を煽っておいて、何もしないでただ様子を見る」、
だけでは国民が納得しないのではないか。
 民族主義を高揚させ、愛国心を煽り、中国全土にわたって官制デモを企画した熱意はどこへいったのであろう。
 熱気ムンムンになり怖いもの知らずを一度経験してしまった民衆が、このまま「冷たい対立」で満足するとはとても思えない。
 中国としてはこれだけおお事にすれば、「反省とお詫び」しか知らない日本は震え上がって尖閣を差し出すと当局は考えたのであろう。
 ところがまるで反対で、これをキッカケにして日本は一気に防御姿勢を強固にし、中国との交戦を想定に入れた防衛力強化に乗り出してしまった。
 さらに悪い事に、日本の対中強硬姿勢は周辺諸国まで影響を及ぼし、距離を起き始める国々が続出してしまった。
 中国に賛意を示したのはわずかに韓国一国という状況にまでなってしまった。
 まさに、このデモを引き金に中国は四面楚歌といった感じがある。
 一年まえのデモ企画時の想定は大幅に裏切られて、日本を追い詰めるどころか、逆に中国自身が追い詰められることになってしまった。
 これは、中国にとって予想外の展開であり、霹靂であったことだろう。

 加えて、このデモは中国全土に騒乱の火種を植え込む、というオマケまでつけてしまった。
 これは当局としては、独裁を維持するうえで重大なミスを犯したことになる。
 海外だけではなく、国内問題にまで発展してしまった。
 もはやテーマはなんであれ、官制デモを企画することは全くできなくなってしまった
 それをやれば、どこまで民衆が暴走するか当局自体もわからなくなってしまっている。
 これは恐怖である。
 ためについ先日は、原発施設の建設計画を発表したしたところ、反対デモが動き出し、これに怯えて、あっという間にこの建設計画を中止してしまった。
 そうせざるを得ないほど民衆が力を握り始めた。
 尖閣デモは民衆の力を目覚めさせてしまった、というわけである。
 中国国内では様子が見えにくくなっている。
 そこで当局は解放軍予算と同等な金額を公安武装警察に振り分けて民衆の抑えこみに入り、ネット上の規制をあからさまに強化することになる。
 しばらくは、独裁権力を利用して、民衆の不満にフタをする方向で動くようになってきている。
 これから、中国は国内の締め付けを強化することになるだろう。
 その間、日本とは「冷たい対立」でやっていくしかない、ということなのであろう。
 対外的な問題より、国内問題が優先せざるをえない。
 下手な日本との妥協は動乱のキッカケにもなりかねなくなってきている。
 やはり今は「長く、静かな闘い」でいくしかないのではないだろうか。


レコードチャイナ 配信日時:2013年8月3日 13時30分
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日中の東シナ海外交戦はますます過熱
=米国が調停する可能性も―中国メディア

 2013年8月2日、環球時報は記事
 「日中の東シナ海外交戦はますます過熱=あるいは米国が調停者となる可能性ありと研究者が指摘」
を掲載した。

 日本メディアによると、中国企業が東シナ海で新たに7カ所の海底ガス田の開発認可を申請した。
 日本側は反発しており、東シナ海をめぐる緊張はさらに高まっている。
 安倍晋三首相が参院選で圧勝したことで、日本はさらに強硬路線を突き進むとの観測もある。

 香港誌・亜州週刊は日本の徴兵可能な年齢の男性は2970万人、ロシアを含む欧州のどの国よりも多いと指摘。
 教育水準も高く、警察や消防などの後方組織の装備、訓練も充実しているとして、ひとたび自衛隊が国防軍に改組されれば大規模な軍拡が可能だと分析している。

 上智大学の中野晃一教授は緊張の高まりが戦争に結びつくことはないと指摘。
 また、情勢の推移を米国は注視しており、調停者の役割を演じる可能性が高いと予測した。


 中国としては日米同盟では動きようがない。
 そこで、なんとかアメリカを日本から引き離す方法をいろいろ模索している。
 中国ラッパはこの点に集中している。
 上の記事などはその最たるものである。
 アメリカに仲裁させることで、日本から離反させ、日中の真ん中にアメリカを置こうとしている。
 わかりやすい構図である。
 でもわかりやすくて、実現したところで旨味がない。
 もうすこし複雑な手を打つべきであろうと思うが。
 客観的に見て、中国のやり方というのは分かりやすい
 わかりにくいのは、それが竹のカーテンから発せられるため、透明性がないということによる。
 強いていうと一貫性がない。
 クルクル変わっても、その変わり方が見難いので、
 あたかもフェイクなのではないかと相手側は先読みしてくれるという利点はある。
  「ノイズか、シグナルか」の判断は難しい。
 陽動教唆というのは少々高等テクニックに分類される。


レコードチャイナ 配信日時:2013年8月5日 16時30分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=75156&type=0

<日中世論調査>中国人の半数が「軍事紛争起きる」と予想
―「相手国にマイナス印象」日中とも9割超

 2013年8月5日、日本の非営利団体・言論NPOと中国日報社は、共同で行った「第9回日中関係世論調査」の結果を発表した。
 日中関係は重要だと認識されているものの、尖閣諸島問題などが影響し、日本人(90.1%)、中国人(92.8%)ともに9割超が「(相手国に)よくない印象をもっている」と回答。
 「マイナス評価」は昨年から急拡大、過去9回の調査で最悪の結果となった。

 また、よくない印象の理由として、
 日本人の53.2%、中国人77.6%が「尖閣諸島をめぐる領土問題」と回答。
 今後の日中間の最大の懸念材料についても、
 日本人の72.1%、中国人の77.5%が「領土問題」と認識。
 日本政府は「日中間に領土問題は存在しない」との立場だが、日本世論の62.7%、中国世論の82.2%が「領土問題が存在している」と回答。
 日中双方の国民の大多数が領土問題の存在を認めている。
 また、日本人の49.1%、中国人の58.1%が
 「両国間で速やかに(前向きに)交渉し平和的解決を目指すべきだ」
とし、領土問題の平和的解決を両国民が求めていることが分かった。

 「日中間で軍事紛争は起きるか」との質問に対し、
 日本人の23.7%、中国人の52.7%が「数年以内に起きる」、「将来的には起きると思う」と回答。
 領土をめぐる意識の高まりを背景に、軍事衝突に対する懸念が出ている。

 こうした中で、「日中関係を重要だ」とする回答は日本人74.1%、中国人72.3%に達し、ともに相手国の必要性に対し高い評価をしている。

 言論NPOの工藤泰志代表は、この調査結果について、
 「相手国に対する印象がここまでひどいのかと衝撃を受けた。
 日本と中国の国民間の直接交流が極めて少なく、相手国に対する認識はほとんど自国のニュースメディアからの間接情報に依存している。
 領土をめぐり相互にナショナリズムが過熱し、メディア報道によってさらに増幅され過熱する実態は放置できない」
と述べた。

 「東京-北京フォーラム」副実行委員長の宮本雄二・元駐中国大使は尖閣諸島問題について
 「すべての紛争を平和的手段で解決するとの日中平和条約の原点に戻ることが重要。
 (条約締結時には)領土問題はあいまいにして、(他の)あらゆる問題を話し合うことによって合意している」
と指摘、まず対話を優先すべきだとの考えを示した。

 この調査は2005年から毎年実施されており、今年は5月から7月にかけ、日本側が全国の18歳以上の男女(有効回答数1000人)、中国側は北京、上海、成都、瀋陽、西安の5都市の18歳以上の男女(同1540人)を対象に行った。

 この調査結果を基に、言論NPOと中国日報社の共催の「第9回 東京―北京フォーラム」が10月に北京で開かれ、両国の識者が「日中関係とアジアの未来」について議論する。




減速する成長、そして増強される軍備


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