2013年8月27日火曜日

尖閣諸島問題での中国の「解決策」の読み方:パフォーマンスと本格的持久戦

_


●26日、華字紙・中文導報の楊文凱編集長は「中日対立の長期化:企業はどこへ進むのか?」と題した記事を中国のブログサイトに掲載した。写真は北京の日本車に貼られた尖閣防衛ステッカー。


JB Press 2013.08.26(月)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38529

国防部長の強硬な発言は強がりなのか?
尖閣諸島問題めぐる中国の「解決策」の読み方

 中国の常万全国防部長が8月16日から20日にかけ訪米した。
 2013年5月の梁光烈に続き、中国の国防部長が2年連続で訪米したことになる。 
 ただし、2013年3月に就任した常万全国防部長と、2月に就任したヘーゲル米国防長官とは初めての顔合わせであった。

 米中間では2013年4月に米軍制服組トップのデンプシー統合参謀本部議長が訪中、6月に習近平主席が訪米し米中首脳会談が開かれ、7月には米中戦略・経済対話がワシントンで開催されるなど、高いレベルの接触が続いたこともあり、今回の常万全訪米の注目度は高くはなかった。

 8月19日に行われた常万全国防部長とヘーゲル国防長官との会談も、来年実施されるリムパック演習に中国海軍が初参加することが確認された程度で、目立った成果はなかったと言ってよかろう。
 そうしたなかで注目されたのが、会談後の記者会見での常万全の発言だった。

 常万全は、アジア太平洋の領土をめぐる争議に触れ、
 「いかなる者も中国側が核心的利益を取引に使うなどと幻想すべきではない。
 我々の領土主権と海洋権益を守る決心と意志を過小評価すべきではない
と述べ、中国の領土主権問題での強硬姿勢をアピールしてみせた。

 しかし、この発言はただの強硬姿勢の顕示だけではなく、中国の「方針転換」を示すものであった。
 つまり、
 中国にとって東シナ海の尖閣諸島も南シナ海の南沙諸島も、
 台湾やチベットのように譲歩の余地のない「核心的利益」だと明示した
のである。

■「集団学習会」で習近平が方針変

 もちろん、これまでも中国の当局者が尖閣諸島を「核心的利益」だと発言したケースはあった。
 だが、公式に記録に残すことは避けてきた経緯がある。

 例えば2013年4月26日、中国外交部の華春瑩副報道局長が定例の記者会見で、デンプシー統合参謀本部議長が訪中時に中国側から尖閣諸島(釣魚島)が中国の「核心的利益」だと主張されたと日本滞在中に語ったことをもとに、記者が中国の公式な立場を問いかけた。
 これに対し華春瑩は、
 「釣魚島問題は中国の領土主権の問題であり、当然中国の核心的利益に属する」
と答えた。
 しかし、このやりとりを掲載した中国外交部のウェブサイトでは回答が改竄され、
 「中国国務院新聞弁公室が2011年9月に発表した『中国の平和的発展白書』が明確に示しているとおり、中国は断固として国家主権、国家安全、領土の完全性などを含む国家の核心的利益を擁護します。
 釣魚島問題は中国の領土主権に関するものです」
と曖昧に書き換えられた。

 同様に、6月7日にカリフォルニアで開催された米中首脳会談の夕食会で、習近平主席が、尖閣諸島が歴史的にも中国の固有の領土であると主張し、これを中国の領土主権にかかわる「核心的利益」に位置づけていることを表明したとされるが、こうした情報は首脳会談後に米国側から漏れてきたものであり、中国の公式メディアに記録されることはなかった。

 中国が尖閣諸島問題を公式に「核心的利益」として位置づけることに慎重だったことは、こうした例を見れば理解できる。しかし、その方針は7月30日に開催された中国共産党中央政治局での集団学習会において習近平自身によって変更されることになる。

 学習会のテーマは「海洋強国の建設」であり、そこで
 「われわれは平和を愛し、平和的発展の道を堅持するが、正当な権益を放棄するわけには断じていかないし、国家の核心的利益を犠牲するわけにはなおさらにいかない」
としつつも、
 「『主権はわが国に属するが、係争は棚上げにし、共同開発する』方針を堅持し、互恵友好協力を推進し、共通利益の合流点を探し求め、拡大しなければならない」
と指摘したのである。

 もとより、こうした発言に際して習近平の脳裏に尖閣諸島や南沙諸島があったことは間違いない。
 そのうえで、これらを核心的利益に位置づけてみせたわけだ。
 しかも、中国の対応として
 「主権はわが国に属するが、係争は棚上げにし、共同開発する方針」
まで提示してみせた。
 一見、武力行使を排除した穏健路線に見えるが、これを南シナ海で中国と対立するベトナムやフィリピンが真に受けるとは思えない。
 中国が軍事的に圧倒的優位にある立場で、これらの国に譲歩する可能性は低いからである。

■中国に「武力行使」の選択肢はない

 しかし、尖閣諸島に当てはめてみると、この中国の方針は、中国が取り得るギリギリの選択肢のように思える。
 ギリギリというのは、
●.日本の対応、
●.米国の反応、
●.それに中国国内の反日愛国ナショナリズムの反発
を考えての話だ。

 中国が尖閣諸島を「核心的利益」と明示的に位置づけてしまった以上、安易に「主権問題を棚上げ」にすれば中国国内が収まらない可能性は否定できず、これは力で抑え込むしかない。
 しかし、「無条件での日中首脳会談開催」を呼びかける日本に対しては、
 開催の前提条件として「領土主権をめぐる問題が存在すること」を認めさせるために、中国側に妥協の余地がないことを知らしめる目的で、尖閣諸島を「核心的利益」と明示せざるを得なかったのかもしれない。
 いわば、「退路を断つ」背水の陣である。
 そして、日中がもし「主権棚上げ」「共同開発」で合意できれば、尖閣諸島の現状維持を望む米国を安堵させることができる。

 この中国の選択肢、すなわち「解決策」は、
 結局のところ尖閣諸島問題で武力行使することが事態を一層悪化させるだけだ
という判断があるからだろう。

 尖閣諸島をめぐる日中の確執が表面化して以来、
 米国は何度も尖閣諸島が日米安保条約の適用範囲に含まれることを確認してきた。
 オバマ政権も同様だ。
 しかも、オバマ大統領が2013年1月に署名し発効した「2013年国防授権法」は、そのことを明文化している。

 すなわち、尖閣諸島に関する上院修正条項がそれである。
 この修正条項の提案者の1人である上院外交委員会東アジア太平洋問題小委員会のジム・ウェッブ小委員長(民主党)は、2012年11月29日の声明で、
 「過去数年間、中国は東シナ海での尖閣諸島や南シナ海での領有権を主張するため、次第に攻撃的な行動を取っている。
 この修正案は、
 米国が尖閣諸島が日本の施政下にあることを認めていることと、
 この立場は脅迫、強制、軍事行動では変化しないことを議論の余地なく明言するものである」
と述べていた。

 尖閣修正条項の内容をかいつまんで紹介すると、次のようなものである。

●・尖閣諸島の最終的な領有権については、米国は、いかなる立場も取らないが、米国は、尖閣諸島が日本の施政下にあることを認める。

●・第三者による一方的な行為は、尖閣諸島に対する日本の施政権に関する米国の認識に影響を与えない。

●・米国は、当事国が領土紛争を強制によることなく協働作業による外交的手段によって解決することを支持し、
 東シナ海における主権及び領有権問題の解決を目指すいかなる当事国による強制、武力による威嚇又は武力の行使の企てにも反対する。

●・米国は、日本政府と、日米安全保障条約第5条
 「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」
に基づく約束を再確認する。

 この条項に従えば、
 たとえ中国が武力で尖閣諸島を占領したところで、
 米国は尖閣諸島における日本の施政権が維持されているものとし、日米が共同で中国に対処することになる。
 局地戦で日米を圧倒できる戦力を保有しているわけではない中国としては、とてもそんな勝算の立たないリスクは冒せないということになる。

■中国が直面する内憂外患

 では、それにもかかわらずなぜ「海警」など中国の公船が繰り返し尖閣海域の日本領海に侵入し、日本の巡視船に対して
 「ここは中国の領海である。速やかに退去せよ」
といった活動を続けているのか。
 それは、
 日本の施政権に対する圧力というよりも、中国国内向けのパフォーマンス
と見るべきであろう。

 しかし、こうした活動や2013年2月に露見した火器管制レーダー照射事件などをとらえ、米国議会上院が7月29日、対中非難決議案を全会一致で採択するなど、中国の行動は裏目に出ている。

 冒頭に紹介した常万全国防部長の強硬な発言は、当然ながら習近平主席の党中央集団学習会での発言を受けたものであるが、表向きの強硬さとは裏腹に、
 尖閣諸島問題で選択のオプションを持たない中国
の「強がり」に過ぎないのではないか。
 小泉政権時代、日中首脳の相互訪問は途絶えたが深刻な問題にはならなかった
 今後3年間は続くと見込まれる安倍政権にとっても、首脳の相互訪問途絶はすでに想定内なのかもしれない。

 中国は国内経済の成長率低下、シャドーバンキング等実態のつかめない負債、経済構造改革への既得権益層の抵抗などの内憂、強硬な外交への国際的な反発などの外患に直面しているが、
 日中経済関係を見れば
★.日本の製造業の中国脱出
★.日米貿易が日中貿易を上回る
等、デカップリング(非連動性)が表れ始めている。
 これまでのように中国経済への過度な期待は影を潜めるようになった。

 本格的に持久戦の様相を深めてきた尖閣問題で、
 時間は日中どちらに味方するのか。
 しずかに見守りたい。

阿部 純一 Junichi Abe
霞山会 理事、研究主幹。1952年埼玉県生まれ。上智大学外国語学部卒、同大学院国際関係論専攻博士前期課程修了。シカゴ大学、北京大学留学を経て、2012年4月から現職。専門は中国軍事・外交、東アジア安全保障。著書に『中国軍の本当の実力』(ビジネス社)『中国と東アジアの安全保障』(明徳出版)など。



【参考】

レコードチャイナ 配信日時:2013年8月2日 19時40分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=75001&type=0
日中関係は長期的な「疎遠」によって拓かれる―環球時報社説
----
----
 日中関係が緊張し続ける中、外交的接触の継続は大変重要だが、
 日中首脳会談に関しては一定期間不必要だ。
 これは日本へのぶれないシグナルであるべきだ。
 首脳会談はすでに外交的意義を超えており、首脳会談の開催自体が日中関係全体に対する1つの姿勢であり、一定の成果があるべきである。
 だが安倍政権の対中思考に全く変化はない。
----
----
 中国社会は現在の両国の「冷たい対立」を結構よしとしている。
 戦争さえ始めなければ、日中間の様々な交流はできるだけ自然な流れに従えばいい。
 双方に有利なことなら自ずと行なおうとする人がいるし、リスクの高いことなら自ずと萎縮する。
 中国の発展はゆっくりとこうした調整に適応していく。
 われわれは日本も徐々にこれに適応することを望む。

 安定的に冷え込んだ日中関係は何年か続いてもよい。
 両国はこの時間を利用して再考し、将来の両国関係を構築するための新たな出発点を見つけることができる。
(提供/人民網日本語版・翻訳/NA・編集/武藤)



レコードチャイナ 配信日時:2013年8月11日 13時7分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=75413&type=0
海上で“鬼ごっこ”を演じる日中―米紙

海上“鬼ごっこ”を演じる日本と中国:両国とも「頑張ってます」というパフォーマンス



サーチナニュース 2013/08/26(月) 10:22 
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0826&f=national_0826_010.shtml

【中国BBS】日本から“釣魚島”を奪うためには…中国人が議論

  中国大手検索サイト百度の掲示板に
 「どうすれば日本はおとなしく釣魚島(尖閣諸島の中国側通称)をわが国に差し出すか?
というスレッドが立てられた。
 スレ主がいくつかの方法を提案したところ、中国人ネットユーザーからさまざまな意見が寄せられた。

  スレ主は

①.“釣魚島を返してくれなかったら海に身を投げる”と跪いて泣きながら言えば、安倍首相も折れて返してくれる、
②.会議に安倍首相を呼び、辛抱強く道理を説き、歴史上では中国のものだと証明していることを諭す、
③.断交をして死んでも会わないと言えば寂しくなって返す、
④.核や監視船を送って脅す、
⑤.手を差し伸べて“兄弟”と呼べば義理堅い安倍首相は返してくれる、
⑥.13億人が一緒に安倍首相を罵れば恐くなって返す

などの方法を挙げた。

  スレ主の幼稚な提案に対して、ほかのユーザーからは
●.「中国から日本製品をなくし、日本漁船をだ捕して上陸すればいい」、
●.台湾と共同戦線を張り、日本製品をボイコットして中国という巨大な市場から締め出し、頑丈な船を作って日本の船に体当たりしまくれば、日本は恐くなって島に近寄らなくなる」
などの強硬手段が提案された。

  また
●.「全国民が力をだし、経済を発展させ、科学技術を振興させ、国力が米国を超えれば、その時には釣魚島を取り戻すのはいともたやすい事」、
●.「やっぱり1つの方法しかないだろう。海軍と空軍を拡張することだ」
といった方法も示された。

  しかし、
●.「わが国の食品と城管を日本に送ればいいんじゃね」
と、食品の安全の問題や市民に嫌われる横暴な都市管理担当者を揶揄(やゆ)した意見や、
●.「抗議して抗議して厳重に抗議し、厳粛に言い渡して終り」
と政府の対応を非難するコメント、
●.「スレ主は夢を見ているな。愛国は良いが夢だけじゃなダメだ」
とたしなめるユーザーもいた。

  尖閣諸島は日本が実効支配しているが、中国は領海侵入など強硬な手段によって主権の主張を繰り返している。
 日本側は尖閣諸島を巡る領土係争は存在しないという立場を貫いているが、中国の戦略は世界に「尖閣諸島が領土係争地」であることを知らしめ、そのうえで日本の実効支配を崩そうとするものだ。




減速する成長、そして増強される軍備


_