2013年6月17日月曜日

「中国の夢」とは誰の夢? 習近平と中国国民が見ているものは同じなのか?

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●消費の拡大で「夢」が実現できるとの見方も


CNNニュース 2013.06.16 Sun posted at 18:36 JST
http://www.cnn.co.jp/world/35032847.html?tag=cbox;world

「中国の夢」は誰の夢? 習主席と国民が見ているものは



  「3つの代表」から「和諧社会」まで、中国政府は昔から不恰好な政治的スローガンが大好きだ。

 しかし、習近平(シーチンピン)国家主席の下での主要な政治的キャッチフレーズとして広く認知されている「中国の夢」には、心をより強くとらえる響きがある。

 昨年11月には、「中華民族の偉大な復興が中国最大の夢」と語っていたように、習氏は国家主席就任前からこのような表現を使っていた。

 そして、今年3月に中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で正式に国家主席に指名された直後の基調演説では、習氏は中国的社会主義の理想へ向かって前進し、中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現するために、不屈の精神で粘り強い努力を続けることが必要だと訴えた。

 だが、「中国の夢」とは本当は何を意味するのか。

 この言葉の意味を、首都北京の古びた裏通りで何人かの市民に聞いてみた。
 20代の働く若者たちにとってそれは、家を買い北京に定住することや、家族と再会するためのお金を稼ぐこと、地元で仕事を見つけることなどであった。

そして、ある40代の商店主の男性は、医者にかかれるようになることが最大の夢だと答えた。

■貧困の撲滅

 習主席にとっての「中国の夢」とは、経済成長の継続だ。

 過去30年間で約6億人が貧困層から抜け出せた中国だが、
 経済の急成長継続のためには、
 輸出主導型から国内消費主導型への経済の転換が必要だ。
 しかし、それは簡単なことではない。

 米金融大手JPモルガン・チェースで中国担当マネジングディレクターなどを務めるジン・ウリック氏は、インフラや工場の建設、不動産開発などに頼り続けることはできず、サービス業主導型の経済に転換しなければならないと語る。

 しかし、上昇志向の強い消費者は中国にも溢れているが、
 貯蓄が減り消費が増加するためには
 「将来に対する不安が減らなければならない」
とウリック氏は付け加えた。

■汚職問題

 社会保障面でのセーフティーネットの強化以外にも、大気汚染の解消や蔓延(まんえん)する汚職の撲滅など、中国政府には課題が山積している。

 米ニューヨーカー誌の中国特派員エバン・オスノス氏は、今日の中国人が経済力だけではなく、より広い意味での「良い生活」を望んでいると指摘する。
 空気がよりきれいな都市での生活や、賄賂や政治的影響が絡まない公正な裁判などが求められているというのである。

 だが、このような希望の実現には政治が絡み、人々の経済的欲求を満足させるためにも政治改革が必要となるため、中国共産党にとっては簡単なことではないとオスノス氏は付け加えた。

 中国政府は、国民の高い望みを認識させられていながら、壁にぶつかっているのである。

■改革は本物なのか

 中国の国連大使なども務めたベテラン外交官の呉建民氏は、習主席の演説や全人代の報告書で政治改革が強調されていると指摘。
 習主席の姿勢は明確であり、中国には法の支配と民主主義が必要なのだと主張する。

 だが、国際社会におけるより高い地位を中国が目指すにつれ、
 膨張主義や侵略へ向かうとの懸念が、
 特に海洋における領土問題として一部で出てきている。

 ただし、習主席は、中国政府は純粋に平和主義志向だとしており、3月のロシア訪問時の演説で、「中国の夢」は中国人のみならず世界中の人々に恩恵をもたらすとも主張した。

 習主席の本当の夢とは何だろう。
 習氏にはそれをを明らかにするための10年の時が与えられている。



WEDGE Infinity 2013年06月03日(Mon)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2842?page=1

習近平の「中国の夢」に伴う2つの危険

 英Economist誌5月4日号の社説は、習近平の言う「中国の夢」の
★.一つはナショナリズムであり、
★.もう一つは、中国共産党の一党支配の継続である
ので、中国が法の支配を尊重し、立憲体制を確立するまではまだ長くかかりそうである、と指摘しています。

 すなわち、1793年にマッカートニー卿は、贈り物を携えて当時世界最大の国家であった清朝を訪れたが、清の皇帝は、英国の恭順を嘉みすると同時に、清国は英国の産品は全く必要としないと述べた。
 英国は、1830年武力を用いて中国に戻り、その後の中国の屈辱が中国革命をもたらすこととなる。

 中国の夢は、アメリカン・ドリームに対応するものならば、それ自体は結構なことであるが、問題は、それに、ナショナリズムと全体主義の匂いがすることである。

 習近平は、過去の指導者のように堅苦しい共産党の表現ではなく、「中国の夢」を平易な言葉で述べ、中国人の感情に訴えた。
 それは、中国民族の偉大なる復興を主張し、18世紀の清朝への復帰を象徴するものであった。

 習近平の夢は、2つの危険を伴っている。
★.1つは、ナショナリズムである。
 彼は、「強兵の夢」に言及して軍を喜ばせているが、それが、日本の植民地時代の屈辱に対する報復を意味するのならば、地域の安定に害となろう。

★.もう1つは、習は、強兵の基礎は、党の命令に従うことだと言っている。
 習によれば、ソ連の崩壊は、イデオロギー的正統主義から遊離したために起きた。
 「中国の夢」は理想であるが、共産党員はより高い理想、すなわち、共産主義、を持たねばならないと言っている。

 習の考えの基本的な問題は、法の支配であろう。
 今年の始め、改革派の新聞は、立憲主義の夢と題して、中国が法の支配を通じて、自由かつ強力な国家となることを論じようとした。
 が、最後の段階で、検閲によって、このタイトルは削除された。

 中国の夢の達成には、まだまだ、長い道のりがあるようである、と述べています。

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 習近平が、「中国の夢」を繰り返し強調していることは、確かに、従来の共産党の神学的用語を使った晦渋な演説とは違うところです。

 上記は、「中国の夢」で、習近平が何を言おうとしているかを分析した社説です。
 習近平は、中国の夢を理想としつつも、より高い理想として共産主義を掲げているということです。

 これでは、この論文の言う通り、「中国の夢」から、改革を読みとることは不可能で、少なくとも共産主義体制の維持、そして、偉大なる中華帝国の復帰を夢見るナショナリズムしかないことになります。
 おそらく、この論文の指摘はその通りなのでしょう。




減速する成長、そして増強される軍備


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